健康な赤ちゃんを出産するための話
トーチ症候群という言葉をご存じでしょうか?アルファベットではTORCH症候群となります。
母体の症状は軽微であるが、妊娠中の感染によって胎児に奇形または重篤な母子感染症を引き起こす恐れのある疾患の総称です。
Rの風疹はもっとも有名です。過去の流行時に多数の先天風疹症候群の子供が産まれました。それ以来、妊娠初期の検査には風疹の検査が含まれています。
Tは何でしょう?これはトキソプラズマ症です。ペットからうつるということで知られています。ペットの中では猫がもっとも危険ですが、それ以外に生肉を食べても感染します。妊娠中は加熱不十分なお肉(生ハムも)は食べないでください。
Cはサイトメガロウイルスです。聞いたことがないかもしれませんが、最近、注目を集めている感染症です。サイトメガロウイルスは通常、子供のころにかかります。従来は妊娠適齢期の女性の9割以上に抗体があり、妊娠時の感染はかなり少なかったのです。最近、衛生ということがいきわたったため女性の抗体保有率が7割程度と低下しています。2人目の妊娠で上のお子さんが保育園などでサイトメガロウイルスをもらってきて、妊娠中のお母さんにうつしてしまう事例が多くなりました。うつっても症状はほとんどありません。鼻水が垂れる程度です。難聴の子どもの2割以上はサイトメガロウイルスによるものといわれています。難聴以外にも小頭症などがあります。治療法はありませんので、予防に重点がおかれますが、子供と同じ食器からは食べない、キスしたりしないなどが言われています。サイトメガロウイルスの検査はほとんどの産科ではおこなわれていません。検査基準には入っていないのです。今後、行われるようになるかもしれません。ともあれ、知らなかったではすまないこともあります。できるだけ母親学級、両親学級などに参加され、いろいろな知識を吸収されることをお勧めします。
きゅうまウイメンズクリニック 久間 正幸